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電子漫画の革命『全巻一冊』開発者・小西享さんインタビュー

2018.07.19

今回は7月14日よりTSUTAYA、蔦谷書店5店舗で体験コーナー設置、予約販売開始となった、革新的な電子マンガ 『全巻一冊』 の開発者であるプログレス・テクノロジーズ株式会社の小西享さんに、開発に至るまでの経緯、そして『全巻一冊』の魅力についてお話をお聞きしたいと思います。

取材=仕掛け番長(@maron_rikiya

誰かに自慢したくなる電子マンガを目指して

全巻一冊ビジュアル

仕掛け番長

実は、私も少なからず関わらせていただいておりますので、その辺もお話出てくるかもしれません(笑)

仕掛け番長

まずはこの『全巻一冊』を最初に作ろうと思ったきっかけを、お聞かせいただいてもよろしいでしょうか?

小西享さん

電子書籍が登場して10年以上が経ちましたが、スマホや電子書籍リーダーなどのデバイスでマンガを読んでいる人に、「この電子書籍スゴイよ!」って自慢されたことが僕は一度もありません
多分みなさんも周りの方に、電子書籍を自慢された経験はあまりないと思います。

小西享さん

マンガはデジタルが発展して簡単に買えるようになりましたし、スキマ時間にどこででも読めるようになって、すごく便利になったとは思うのですが、マンガを読むという体験そのものは紙で読んでいた頃よりも、劣ってしまったのではないでしょうか? デジタルのマンガにそういう課題を感じるなかで、マンガを読む体験そのものがすごく心地よくなる電子マンガを作ろうと思ったのがきっかけです。
テクノロジーを使って読書自体の体験価値を上げることを大事にしようと思った感じです。

仕掛け番長

私も紙で本を読む感覚が好きで未だにやっぱり紙がいいなと思う事が多々あります。
電子は電子でいい部分も沢山あるのですが小西さんの言うとおりマンガを読む体験という意味では、電子は紙には勝てないですよね

仕掛け番長

そんな体験価値に目を向けて生み出された『全巻一冊』。これには漫画好きの求めるものが多く詰まっていると私は思います。例えばそれは質感だったり所有欲だったり……。その中で、小西さんが最も重要視した部分をお聞かせいただいてもよろしいでしょうか?

小西享さん

最も重要視した部分は、いかにシンプルに紙のマンガを読んでいる感覚に近づけるか!でした。外から見たときの雰囲気、持った時や開いて手に取った時の重さの感じ、読み始めた時の紙感、直感的に扱えるように無駄を省いた操作性、コードを繋いで充電しながら読むことのないように電池にしたり(もちろんバッテリーによる製品劣化を無くすためでもありますが)など、紙でマンガを読む感覚を重視しました。

仕掛け番長

なるほど……。その理由をお願いできますか?

小西享さん

理由としては、二つあります。
一つは、既存の電子書籍を受け入れることができずに紙の本を読んでいる人にも納得してもらえる電子書籍を作って、一歩踏み出してもらいたかったこと。
もう一つは、電子書籍であっても紙の本を読んでいた時に感じていた独特の読書感覚が得られるものにしたかったこと。
この独特の感覚は、電子書籍と『全巻一冊』で同じマンガを読んでみていただくとハッキリとわかります。

仕掛け番長

いまさらですが私は本当に本が好きで、毎日のように子供のころから読んでました。そんな私でもこの『全巻一冊』の読み心地、読書感覚には納得がいきます。そしてこのプロジェクトに私が加わるようになったのは、昨年の年末でちょうど第1弾である「北斗の拳」が話題になり始めた時期でした。

仕掛け番長

初めて見せていただいたこの『全巻一冊』に大変興奮したのを覚えています。その時小西さんから「書店員として有名な仕掛け番長さんにご協力して欲しい」という言葉が今でも印象に残っております。この書店員に参加して欲しかったという言葉には色々な思いがあるように思ったのですが、なぜ書店員である私にお声がけいただいたのでしょうか?

小西享さん

『全巻一冊』が紙のマンガの感覚に近いからなのですが、リアルな書店で紙のマンガを買う人たちをずっと最前線で見続けながら、今のマンガが持つ課題と向き合って戦い続けているプロフェッショナルな方にどうしてもご協力いただきたい状況でした。そもそもプロ目線で『全巻一冊』をどう感じるのか?『全巻一冊』をどうやって仕掛けていくのか? など右も左もわからない状況でしたので、一緒に情熱を持って動いていただける方をと思っていたところ仕掛け番長さんをご紹介いただいて、つながっていった感じでした。本当におかげさまでお話も進み、ここまで辿り着くことができました。

仕掛け番長

私もこのプロジェクトに参加できた事、本当に嬉しいです。一マンガ好きとして「マンガ」というものに、そして「読書」という体験そのものにこんなにも真摯に向き合っている小西さんの想いに胸が熱くなりました。お引き合わせして下さったマンガ新聞の菊池健さんに本当に感謝です。そんな想いの詰まった、『全巻一冊』ですが、今回ネット販売ではなくあえて店頭販売にこだわった理由をぜひお聞きしてもよろしいでしょうか?
店頭体験コーナー

小西享さん

リアルな書店での販売にこだわった理由のひとつは、『全巻一冊』の良さを知ってもらうためにはまずは体験をしてもらわないと始まらず立ち読みなど体験ができるリアルな場所が必要だったということです。
もう一つの別の理由として色々と出版業界の方にお話を伺う中で、本屋さんを少しでも元気にできるといいな!という点がでてきた部分があります。最近は本屋さんにいっても、基本的に立ち読みをしながらおもしろいマンガを発見できる機会がなくなってしまいました。

小西享さん

それもあって、最近では本屋さんに行く理由が少なくなってきているように感じています。そんな中で、おもしろいマンガを発見したり体験したりできる場所を用意して、本屋さんを新しい発見ができる場所にしていくことが今後できればという思いがあります。

漢(おとこ)祭りな第1弾ラインナップ

全巻一冊4作品のコンテンツカセット

仕掛け番長

私も正直体験するまでこの『全巻一冊』をみくびっていました(笑) 本が本当に好きな方にこそ、ぜひ体験をしていただきたいですね。そして今回第1弾として4作品のカセットが同時発売されます。それぞれの作品の魅力をお聞かせ下さい。

小西享さん

この4作品の魅力は逆にぜひ、仕掛け番長さんにご紹介いただきたいところです! よろしくお願いします。ちなみに私からは言えるのは、第1弾の『全巻一冊』シリーズは、海江田四郎(沈黙の艦隊)・草加拓海(ジパング)・冴羽獠(シティーハンター)・ケンシロウ(北斗の拳)・萬田銀次郎(ミナミの帝王)と、船出は漢(おとこ)祭りですね(笑)

仕掛け番長

了解です(笑) 今回は40代以上の男性ならおっ!となるラインナップが揃いました!
まずは、かわぐちかいじ先生の「沈黙の艦隊」「ジパング」(ともに講談社)からです。「沈黙の艦隊」は発行部数約2500万部の大ヒットマンガで全32巻の超大作です。そして、「ジパング」はその「沈黙の艦隊」を超える全43巻。
両作品とも、簡単に語るのは難しい非常に濃密な作品になっています。実はこの『全巻一冊』のタイトル選定のご相談を受けたとき、私が1番にご提案したのが、かわぐちかいじ先生のお名前でした。

仕掛け番長

そして北条司先生の「シティーハンター」(ノース・スターズ・ピクチャーズ)。こちらも最近、転生ものが描かれるほどの大人気作で、全35巻・発行部数5000万部を超えるシティハンター・冴羽獠の活躍を描いた傑作です。北条先生の絵は今見ても本当に綺麗で、劣化しない『全巻一冊』で所有できることが、なんだかうれしく感じました。

仕掛け番長

次に、武論尊先生・原哲夫先生の「北斗の拳」(ノース・スターズ・ピクチャーズ)全27巻で累計1億部を突破している、まさに日本を代表する人気漫画です。この『全巻一冊』の第1弾のタイトルでもありますが、今回はバイリンガル機能がついていますので全巻英語でも楽しめます! 英語の勉強の教材としても最適かもしれません。

仕掛け番長

最後に紹介するのは天王寺大先生・郷力也先生の「ミナミの帝王」(日本文芸社)です。ドラマ、映画と大ヒットした作品で、今回のラインナップでは唯一の完結作ではなく、100巻まで収録となりました。この作品はファンの方はもちろん、この機会にドラマ版、映画版しか見ていなかったという方にこそ、読んでほしい作品です。設定が色々違っていて面白いんですよ!!と、長くなってしまいましたね(笑)

小西享さん

いえいえ、ありがとうございます。

仕掛け番長

それでは最後になのですが、この記事を読んで『全巻一冊』に興味を持った読者の方に、メッセージをいただければと思います!

小西享さん

『全巻一冊』は自分を含めマンガ好きの開発者一同が、読み手側に立ちながら開発を進めてきた商品です。体験していただくことでその思いが伝わると思っておりますので、ぜひ書店に足を運んでいただいて、手に取っていただければと思っております。みなさまの応援で、出版社様にどんどんご提案を進めていこうと思っていますので、ぜひ応援をよろしくお願いします。

小西享さん

こちらの5店舗にて予約好評受付中ですので、宜しくお願いします!

  • SHIBUYA TSUTAYA
  • 銀座 蔦屋書店
  • TSUTAYA BOOKSTORE 五反田店
  • 梅田 蔦屋書店
  • 六本松蔦屋書店

仕掛け番長

お忙しいところ、本日はありがとうございました!!