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佐倉準先生×リサパソ先生対談『湯神くん』で繋がる二人の輪

2019.02.14

週刊少年サンデー(小学館)にて『湯神くんには友達がいない』を連載中の漫画家・佐倉準さん(@Sakura_Jun)、そして現在も佐倉さんのアシスタントであり「ガリャ山ポヨ美の片想い」の単行本が発売中のリサパソさん(@risapaso821)の、湯神くんで繋がるお二人に対談インタビューを致しました。

取材=仕掛け番長(@maron_rikiya

共に幼少期から絵を描くことが好きで

(C)佐倉準/小学館

仕掛け番長

まず、それぞれマンガ家になろうと思ったきっかけをお伺いしたいと思います! 佐倉先生お願いします。

佐倉準さん

特別なきっかけらしい出来事があったわけではないのですが、幼稚園の頃から絵を描くのが好きで、その流れがずっと続いていった感じです。小学生に上がるとノートに好き勝手に漫画を描いていました。

仕掛け番長

はじめからオリジナルの作品だったんですか!?

佐倉準さん

そんな大層なものじゃなくて、ドラえもんを真似したみたいなものを描いていました。高学年になったら好きな漫画の模写をしていた記憶があります。

仕掛け番長

元々、ストーリーを考えるのがお好きだったんですか?

佐倉準さん

…………たぶん好きだったんじゃないでしょうか。

仕掛け番長

すごく沈黙が(笑)

仕掛け番長

佐倉さんが漫画家を目指して投稿していた頃はどんなご状況でしたか?

佐倉準さん

漫画家を目指しながら地元でアルバイトをしていたのですが、仕事が終わって家に帰ると疲れ果てて漫画を描く前に寝ちゃうんですよ(笑) なのでバイトで貯金をしてから、仕事を辞めて地元の月刊誌の先生のところへアシスタントへ入って投稿先を描いていました。月刊のアシスタントは掛け持ちしないと仕事に入る日数が少ないので生活費はきつくなるのですが貯金を切り崩しながら漫画を描けばいいと思って。

佐倉準さん

投稿作を描きあげて漫画賞に投稿したんですが、賞には入らなくて。でも、小学館の編集さんから連絡があって、担当についてくださることになりました。その後に「好きに一本描いてみて」と言われて描いた作品が入選してデビューが決まり、後は上京して週刊のアシスタントをやりながら何本か読み切りを描かせて頂きました。でも連載用のネームを描いても中々連載がとれる話が描けなくて。最後にこれが通らなかったら地元に帰ろうと思いながら描いたのが『湯神くんには友達がいない』でした。

仕掛け番長

ありがとうございます。続いてはリサパソさんお願いします!
(C)リサパソ/エコーズ

リサパソさん

私は小さい頃から口下手で人見知りなタイプなのですが、口でものを言えないので、絵に描いてそれを発信するという方が表現しやすかったんです。小学校の頃、机に座ってノートにずっと絵を描いていると、何描いているの? って声をかけてくれる子がいて、絵を描くことによって人とのコミュニケーションがとれ、自分の内面を伝えることが出来ると思っていました。それを続けていたら、絵を描く仕事に就きたいなと考えて、漫画を描く様になりました。

仕掛け番長

絵でコミュニケーションって素敵ですね! リサパソさんもやはり、小さい頃から絵を描かれているんですね。

リサパソさん

私の場合は、絵を描くのが上手な父と姉に、教えてもらえたことも大きかったと思います。

仕掛け番長

リサパソさんの、デビューのきっかけはなんですか?

リサパソさん

高校時代から漫画家を本気で目指そうと考えて、卒業後は地方の専門学校に進みました。そこで出版社に持ち込みをする旅行がありまして、とにかく色々な出版社に持ち込みました。その頃は主に少年漫画の編集部に持ち込んでいて、その中でサンデー編集部さんが好感触だったので、長らくお世話になっていました。

仕掛け番長

では、デビューは小学館さんだったんですか!?

リサパソさん

そうですね。漫画賞の上位に入ったのでサンデーの増刊号に掲載して頂いたので、それがデビューになると思います。何年間か、サンデー用にネームを作っていたのですが、私は手が遅い方だったため中々うまくいかず、とにかく遊びでも良いので自分の作品を誰かに読んでほしいなと思って、投稿サイトを探しました。私はパソコンを持っていないんですが、投稿サイトってだいたいパソコンでファイルを圧縮しないとアップロード出来ないところが多いんですが、マンガハックさんはスマホからでも投稿出来るので利用させて頂きました。

仕掛け番長

リサパソさんはアナログ作画ですが、スマホで投稿されてるんですか?

リサパソさん

アナログで描いたものを写真に撮ってアップしています。

仕掛け番長

それが人気になって単行本化に繋がったという訳ですね! そして、リサパソさんは現在も佐倉さんのアシスタントをされているとのことなんですが、リサパソさんのお仕事ぶりはいかがですか?

佐倉準さん

すごく頼りになります。かっこいい背景をいつも入れていただけるので、自分の絵まで上手に見えるような気になります(笑) 職人肌で仕事に対する姿勢がとても誠実なんです。

リサパソさん

そんなに褒めて頂いて恐縮です。

仕掛け番長

アシスタントのお仕事がどんなお仕事か知らない人が多いと思うのですが、具体的にどういったことをやられているんですか?
佐倉さんの背景指示

リサパソさん

先生の思い描いている絵を表現するといったイメージでしょうか。佐倉先生は基本的にうっすら目安となる絵を入れてくださっているので、それをベースに細かく描いていきます。
アシスタントさんの背景下描き

仕掛け番長

作家さんの思い描いているものを読み取って、それを完成するお仕事なんですね! それが正に職人技なのですね!!
完成原稿

佐倉準さん

はい。 ここいい感じにお願いしますとお伝えすると、本当に素敵ないい感じの背景を入れていただけるんです。

仕掛け番長

佐倉さんからみた、リサパソさんの作品「ガリャ山ポヨ美の片想い」の感想をお願いします。

佐倉準さん

ブラックユーモアと読めない展開がとても面白いです! シリアスもコメディでも、こうくるか! と思わされるので、いい意味で読み手を裏切る、気になる展開を描くのがうまいなあと思います。シリアスになってもバランス感覚がいいので読後感がずっと明るいんですよね。ブラックな重たいお話の後にコメディを挟んで、こっちを振り返ってくれる感じが好きです。一読者として続きを楽しみにしています。

仕掛け番長

では、「湯神くんには友達がいない」はどうですか?

リサパソさん

本当に好きな作品です。少年漫画の主人公像とは真逆で、仲間のためではなく、自分のために動く湯神くんにはすごく好感が持てます!

仕掛け番長

確かに「湯神くんには友達がいない」の単行本が出た時って、こういった主人公像の作品は少なかったと思います。湯神くんの人気が出てから、こういったキャラクターが主人公の作品が増えたと思います。どの様にして湯神くんは出来上がりましたか?

佐倉準さん

湯神くんは担当さんとの雑談から生まれました。好きだなって思える偏屈な人の話をしていた時に、自分も含めこういう人周りにいっぱいいたなぁと思って。その色んな部分をちょっとずつ全部足していって漫画にしました。

仕掛け番長

雑談からとは驚きです! 1巻がでた時に、書店員仲間でも話題になっていました。そして、これがきちんと売れたということで、みんな衝撃を受けておりました。少年漫画の主人公像を変化させたと思っています。身近な方がモデルになってるから、あるあると納得するキャラクターが多いのかもしれません。

仕掛け番長

今回は大変盛り上がった会でしたので、お話は次回の後編に続きます! ので後編もお楽しみに〜!

仕掛け番長

後編の始まりです! それでは、ガリポヨの記憶に残ってるエピソードをリサパソさんお願いします。

リサパソさん

やはりお化け屋敷編ですかね。一番脂が乗っていた時期と言いますか。
(C)リサパソ/エコーズ

仕掛け番長

読者もそれはヒシヒシと感じ取ってたと思います!やはり著者さんの思いと読者の感じ方もリンクするものですね!

リサパソさん

それまでは罫線の入ったルーズリーフに描いていたのですが、綺麗な紙に変えて描くぞ! と紙も変えたので特に覚えているのかもしれません。
はじめは遊び感覚で描いていたのですが、見て頂く方が有難いことに増えていって、このままじゃマズイぞ! と気合を入れ直した時期だと思います。

仕掛け番長

描く紙の変化まで! 確かに、それは覚えているかもしれませんね。読者さんもお化け屋敷編はとても好きだと思います!

リサパソさん

未だに感想頂く際に、お化け屋敷編が面白かったと言ってくださる方もいるので、やったーー! という気持ちでいっぱいです。

仕掛け番長

リサパソさんの遊び感覚で始まった物語が、口コミで広がり、全編鉛筆描きの漫画の単行本が発売されたというのは、とても衝撃的でした!

リサパソさん

皆さんの応援の声あってのことだと思っています。Twitterのリプライでコメント頂けたり、読者の方との距離をとても近く感じていますね。

仕掛け番長

佐倉さんはTwitterは?

佐倉準さん

一応やっているんですが、SNS が下手でツイートもすごく悩みながらやっています。学生時代からこんな感じなので、多分向いてないんだと思います。サンデーうぇぶりで湯神くんの再掲載をやっていて、そこで作品の紹介を兼ねた作者コメントがあるのですがたった3行に3時間ほど文章に悩んだりなど…。

仕掛け番長

3時間!? それはその時間で、原稿描かないとですね(笑) 雑誌で連載されているとファンレターもくるんじゃないですか?

佐倉準さん

はい!ファンレターを貰えるととても励みになります。返事は年賀状くらいでしか返せてなくて申し訳ないのですが…。全て大切にとっていて疲れた時に読み返したりして元気をいただいています。学生の頃からファンレターをくれていた方が年月が経って、結婚します!と報告を頂いたりとか、お手紙によって、知っている人みたいに読者の方を感じれます。

仕掛け番長

それでは、湯神くんで佐倉さんの記憶に残っているエピソードをお願いします。

佐倉準さん

ネームを切って初めてキャラクターがわかる瞬間というのがあるんです。湯神くんで、ヒーローとヒロインが絶交するお話があったんですが、「どう仲直りするか」が見えていないまま、話の上では「仲直りする」だけ決まった状態の見切り発車でネームを切ったらしっくりいく話にならなくて。ストーリーの方は終わっても、キャラがついていってない、こいつはこんな事言わないし、はまってないと思って。

佐倉準さん

私はネームをよく切り刻んで組み直すんですけど、その切り刻まれた紙の山の中にヒロインが笑っている顔があったんですよ。突然「あ、これだったんだ!」ってどこか寂しげに終わった話が全部オセロみたいにひっくり返りました。一つ拾えただけでネームのピンとこなかった他の部分もパズルのピースみたいにカチカチっとハマっていって。こいつはこんなこと考えていたのかって。キャラクターに教えてもらえた気がします。そこにいくまでが長いんですけど、そこが知りたくてネームを切ってるなっていう部分があります
切り刻まれたネーム

仕掛け番長

まさにキャラクターが勝手に動いた瞬間ですね!

佐倉準さん

担当さんとたくさん打ち合わせをして、いざ描いてみたらなんかキャラが違うって事があってそうなると打ち合わせと違うネームを提出したり、OK出たのに書き直したり…通してくださる担当さんには感謝しかないです…

仕掛け番長

長期連載されていて本当にお疲れ様です。それでは、お二人がおすすめしたい作品お願いします。

佐倉準さん

私は友達から読んだ方がいいよ!とお薦めされて読み始めたんですが、十日草輔さんの『王様ランキング』です。面白くて、童話のようにあたたかい作風なのに少年漫画みたいに熱いシーンもあって。泣きながら読んでいる事もよくあります。キャラクターに多面性があってすごくいいんですよね。「このキャラあの時こんな事考えてたのかな」って振り返ってキャラクターの心情を思い描きながら読み直すと何重にも楽しいです。

リサパソさん

私も友人に薦められたんですが、架神恭介さん×横田卓馬さんの『戦闘破壊学園ダンゲロス』(講談社刊)です。異能力バトル作品なのに青年誌らしく素敵なエログロが詰まっていて、キャラクターも個性的で好きです。一番のポイントは、まさかその能力が後で生きてくるとは!と読者の予想をいい意味で裏切る展開があるところです。

仕掛け番長

最後にそれぞれファンの方へメッセージお願いします。

佐倉準さん

湯神くんは、本当は1巻5話で終了する予定でした。最初にアンケートをたくさん送って頂いて、2巻までやろうという事になり、そうしたら1巻の重版がかかって…と、そういった事の繰り返しで続きました。みなさんに応援して頂けたおかげで、今でも連載を続けることが出来ていて、感謝しかないです。1話を描けた時にラストまで考えてはいたんですが、そこまで描くことは無理だから、終わる瞬間はその時点でのキャラ達の成長に合わせて描ける内容にしようと思っていました。みなさんのおかげで、思い描いていたラストまでたどり着けそうな幸運な作品だと思います。これからも楽しんで頂ける様に頑張りますので見守っていただけたらと思います。

リサパソさん

ガリポヨは思いつきで描いていて、ラスト全く考えておらず、先延ばしにして描いているのですが、その私のあがきを今後もみて楽しんで頂ければ嬉しいです。

仕掛け番長

お二人とも本日はありがとうございました!

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