本日は、30周年を超え、益々ファンの熱量が高まっているSDガンダムシリーズ。矢立文庫(サンライズ)にて「SDガンダム ザ・ラストワールド」を構成・執筆を担当されたシナリオライターの栗原昌宏さん(@knighthayate)、そして、数多くのSDガンダムをデザインされています寺島慎也さんにお話をお伺いしました。
取材=仕掛け番長(@maron_rikiya)
ストーリーと世界観は、最初は無かった?
(左)寺島慎也さん (右)栗原昌宏さん
仕掛け番長
まずは、SDガンダムという、とても幅広いコンテンツの中で、『ザ・ラストワールド』は何故生まれたのか、その理由を教えて下さい。
栗原昌宏
さん
矢立文庫が立ち上がる際に、サンライズさんの中で様々な企画が検討されていました。その中の一つとして、SDガンダムを取り上げようというものがあり、そこがスタートですね。初めは、今までのSDガンダムに登場するキャラクターを紹介していく、というものでした。ですが、それだけでは企画として新鮮さがないので、SDからリアルに変形する新キャラクターを混ぜて、新旧のキャラを絡めて紹介していこう、という流れになりました。
仕掛け番長
えっ!?では、ストーリーが元々あったというより、キャラクターを紹介する内容の企画だったのですね?
寺島慎也
さん
ストーリーと世界観は、なくても良いという内容になりかけてたんです(笑)
寺島慎也
さん
初めは、キャラクターファイルだけを毎月何枚も何枚もどんどん更新していこうという話がありました。
仕掛け番長
BB戦士はプラモデルとその組み立て説明書に漫画があって、キャラクター紹介があってという感じでしたが、あの内容のイメージでしょうか?
栗原昌宏
さん
イメージ的には近いですね。パワーアップの内容がわかって、必殺技が書いてあって、それをキャラクターファイルにして更新していこうというのがメインの企画でした。
仕掛け番長
なるほど、キャラクターファイルをどんどん載せていく予定だったのですね。
寺島慎也
さん
新キャラクターに関しても、当初は主人公として立てていこうとかではなく、狂言回しになってもらえればいい程度のポジションだったんです。
仕掛け番長
エクシアを主人公にするというのは最初から決まっていたのでしょうか?
寺島慎也
さん
SDガンダムの企画を創るときには、元のガンダム作品があって、そこに登場するMSをモチーフにしてキャラクターをつくっていく流れがありました。『ザ・ラストワールド』の企画を検討している際、『機動戦士ガンダム00』をメインのモチーフにしたSDガンダムがまだなかったこともあり、エクシアが候補にあがりました。
栗原昌宏
さん
SDガンダムの新企画で、新しいガンダムシリーズをモチーフにすれば、まだSDに馴染みがない新しい人にも興味を持ってもらえると思いました。また、そういう人たちがより興味を持ってくれるものは何だろうと考えた時に、SDからリアルへの変形というものが出てきたんです。そうして、閃風忍者エクシアとガンダム・ザ・ゴールドが生まれました。
寺島慎也
さん
ちなみに、忍者エクシアが発表されたのは、『ザ・ラストワールド』がはじめてなのですが、実は別のSDガンダム企画の中では、あがっていたキャラクターでしたね。
仕掛け番長
エクシアと同じように『ザ・ラストワールド』オリジナルのSDガンダムであるザ・ゴールドもそういった背景があったのでしょうか?
寺島慎也
さん
ザ・ゴールドに元のモチーフはないのですが、様々な世界のキャラクターが出てくるとなった時に、“スペリオルドラゴン”は絶対に必要になるだろうと考えました。そのスペリオルドラゴンと対等以上のキャラを出してやろう、ということで黄金にしましたね。
仕掛け番長
僕、最初にザ・ゴールドを見たとき、金のガンダムと言えば…と千生将軍が浮かんできちゃいました(笑)
寺島慎也
さん
あの成金趣味な感じのキャラクターとは、ザ・ゴールドは違いますよ(笑)
仕掛け番長
(笑)ありがとうございます。では、今までのお話にも出てきている部分ではあるのですが、この作品のSDガンダムシリーズでの立ち位置に関してお聞きしたいと思います。やはり30周年記念という事で生まれた作品なのでしょうか?
栗原昌宏
さん
30周年記念というよりは、矢立文庫のSDガンダム企画、という部分が大きかったと思います。また、これまでSDガンダムにあまり馴染みがなかった人たちにも見て欲しいというのもありました。もちろん、これまでずっとSDガンダムを好きでいてくれた人にも。
仕掛け番長
最初に登場するキャラクターの中に、殺駆頭(ザクト)がいましたが、あれはファンとして非常に熱かったです。
栗原昌宏
さん
一番初めに出てくる敵キャラなんですが、元々は闇皇帝に操られているだけで、本当はいいキャラクターなんですよね。だから、この世界では味方として活躍する立ち位置も面白いかなと思い、登場させました。あとは、BB戦士 LEGENDBBとしても立体化されているので、気になった人はすぐに手に入れることができるのも起用理由ですね。
寺島慎也
さん
あとSDガンダムって、敵も味方もガンダムばかりになると飽きるので、主人公パーティーにもガンダムじゃないキャラクターを入れようというのもありましたね。
仕掛け番長
本当に、メインじゃなくて、ちょっとメインからずらしたキャラが出てくるじゃないですか。例えば、機兵で言えばレッドウォーリアRでアルジャーノンとか。ガンレックスやそれこそガンジェネシスとかではないキャラクターを選んでいるという。あのような演出も、すごく面白いなと思っていまして。
栗原昌宏
さん
メインキャラには、銀河を1つ平気で壊してしまうようなキャラもいるので、なるべく、ちゃんと戦いが成立するように意識してチョイスしましたね。ただ、それだけだと面白くないので、機兵を出してみたりして、バランスと懐かしさをうまく調整していきました。
仕掛け番長
今回、武者が中心というところは何か理由があったのでしょうか?
寺島慎也
さん
騎士をモチーフにした「SDガンダム外伝」シリーズは、カードダスで新キャラクターがどんどん登場していました。逆に、武者をモチーフにした「SD戦国伝」シリーズは、プラモデルが一部出ているだけで新キャラクターが登場してるわけではなかったのもありますね。
栗原昌宏
さん
カードダスでは、1商品で新しいキャラクターが40ほど出てくるんですよね。そうすると、1年で100以上増えていくので、外伝は新規キャラクターをなるべく出さないようにしたんです。
仕掛け番長
それで武者系統の新キャラクターを出そうとなったんですね。
栗原昌宏
さん
じつは、特に意識してそうした訳ではないんですけどね(笑)
仕掛け番長
武者の方が、武者號斗丸(ゴッドマル)とか頑駄無真駆参(マークスリー)など、人気所が多く登場するような印象ですよね。
栗原昌宏
さん
真駆参は、レジェンドBBで大将軍を出すという企画が、作品がはじまってすぐに決まったこともあり、第1部の最後に登場させることにしました。最初から大将軍で出していくと、強すぎるので、終盤にしたのもありますね。
仕掛け番長
號斗丸がすぐ退場してしまう展開は驚きました。
寺島慎也
さん
あのシーンは、実は誰が登場しても良いシーンだったんですよね。キャラクターを発注する際に、どのシーンに誰を出すという内容ではなく、「リアル頭身に変形するSDガンダム」というざっくりとした発注でした。そしたら、僕以外の皆さんも有名どころを描いてきたので、ちょっとだけ頭を抱えてました(笑)
仕掛け番長
そうなんですね!(笑)ちょっと思い出の話になってしまうのですが、武者荒烈駆主のプラモデルを子どものころ、凄く苦労して買った記憶があります。いつも発売日当日に行って一個残ってるか残ってないかって状況だったので、学校が終わった後に皆と走って、なんとか買えるかぐらいの人気でしたよね。その大好きな荒烈駆主がリアル頭身になるっていうのは、本当に感動ものでしたね!
栗原昌宏
さん
特に「風林火山編」の時はすごい人気でしたよね。
寺島慎也
さん
1回で退場するのは、もったいなかったかな(笑)パーティーのキャラクターがどんどん増えていくとややこしくなるので、それはしない方向性だったんですよね。
栗原昌宏
さん
今回は、脇で活躍していた真駆参などをピックアップしてあげたほうがいいかな、というのも少しありました。
仕掛け番長
ありがとうございます!キャラクターファイルの方がメインだったという話がありましたが、元々の企画として、キャラクターファイルからつくるという狙いはなんだったんですか?
栗原昌宏
さん
元々、キャラクターを紹介していこうという企画だったので、キャラクターファイルとしての見せ方が一番良いだろうと進めていきましたね。ただ、外伝はこれ、武者はこれ、といったように、シリーズ毎に少しずつフォーマットも変えたりして、豪華に見えるよう工夫はしました。
仕掛け番長
ファイルの中で、ワールドガイドとか、違うガンダム達もいっぱい出てますよね!
寺島慎也
さん
あれは担当が好き勝手描いてましたね(笑)
栗原昌宏
さん
やっぱりキャラクターが多いので、本編の戦闘の裏では、きっと別の戦いもあったと思うんですよ。
寺島慎也
さん
なので、何が出てきてもいいように、全部のシリーズに何かしらで触れているような内容になっていると思います。
栗原昌宏
さん
厳密に言うと、「レインボー大陸戦記」とか「SDガンダムバインド」とか、出てないのもちょこちょこはあるんですが(笑)
仕掛け番長
改めて紙で見ると、すごくキレイに見えますね。
栗原昌宏
さん
元々、紙の本にする企画があって進んでいたのもあるからですね。あとは、スマートフォンやブラウザで見ると小さいものは見えづらいので、内容を広げすぎて複雑になってしまわないようには意識しました。
寺島慎也
さん
全部を盛り込むと複雑になりすぎてしまうので、振り返って思い出すとか、知らなかったものを知ってもらえるような内容にしましたね。
栗原昌宏
さん
こんなの知らなかった、というのは意外とあったんじゃないかと思います。そこへ忍者エクシアなどの全く新しい世界観のキャラも含めたことで、新たな発見があるというような構成にしました。
仕掛け番長
そうですよね。新しいキャラクターが出てきて、新しいシリーズかと思いきや、殺駆頭とか出てきて、おぉ〜みたいになりました。小説で物語を進めることに関しては、何か意図があったんですか?
栗原昌宏
さん
それは、矢立文庫としての企画だったからですね。ただ、掲載当初から「マンガにならないの?」って声は頂いてましたね。
寺島慎也
さん
最後の方はマンガでお届けしていましたが(笑)
仕掛け番長
やっぱり、マンガで読んでいると、全編マンガで読みたくなります(笑)
栗原昌宏
さん
マンガにするなら、違ったアプローチの物語でも面白いのかな、とは思ってますね。
寺島慎也
さん
最終的にザ・ゴールドと対峙するのは主人公たちかもしれないと思って書いているんですが、その過程はいくら変わっても全然問題ない世界観にはなっているので。
栗原昌宏
さん
小説部分をそのままマンガにするのではなく、アレンジが加わっても楽しいと思いますし。
寺島慎也
さん
第二部でエクシアを主人公にしなかったのは、どんなキャラクターでもこの世界観なら物語を構築できる、という実験的な意味もあったと思います。
仕掛け番長
ありがとうございます。今までのお話にも出たように多くのSDガンダムが登場するお話なのですが、その中で一番のお気に入りのキャラクターをあげるとしたら、どのキャラクターになるでしょうか?
栗原昌宏
さん
凄く悩むんですが、やっぱり、思い入れとしては真駆参ですかね。商品化のお話もあったので、そこに向けて盛り上げて行こうというのも決めていましたし。あとは、自分が「SD戦国伝」からSDガンダムに関わっているというのもあると思います。ストーリーとしても、真駆参ならスペリオルドラゴンとザ・ゴールドの戦いに絡めやすいと思ってましたね。それ以外にも、「SDガンダム忍風伝」などの新しい世界観を作ったり、ガンドランダーやガンボイジャーの新たなシリーズを考えることが出来たのは楽しかったかな。
栗原昌宏
さん
あとは、『ガンダム Gのレコンギスタ』に登場するG-セルフをモチーフにしたキャプテンセルフはお気に入りですね。諸事情により本編には登場していないのですが、設定画は描いてもらったので、本には収録しています。
栗原昌宏
さん
やはり、SDガンダムといえば横井孝二、というのが私の中にはありまして、その横井さんがデザインされたのがキャプテンセルフなので。
仕掛け番長
ありがとうございます。寺島さんは、いかがでしょうか?
寺島慎也
さん
どれか1つに絞るのは難しいですね。この世界の仕掛け人というポジションのザ・ゴールド、何年越しで日の目を見た忍者エクシア、このどちらかだと思いますね。自分でデザインしたというのもあるので。
栗原昌宏
さん
龍帝ユニコーンではないんですね?(笑)
寺島慎也
さん
龍帝ユニコーンは、実は当時描いていたタイミングで、BB戦士のユニコーンガンダムも描いていたので……線が多くて大変だったんですよ(笑)
寺島慎也
さん
最近だったら、スターウイニングガンダムも良いですね。でも、みんな良いので差をつけられないです。昔のデザインをリファインしたりもしていて、選べないですよね。
仕掛け番長
ありがとうございます。ちなみに、一番初めにデザインされたSDガンダムはどのキャラクターだったのですか?
寺島慎也
さん
単品でまるっとデザインしたのは、阿修羅頑駄無ですかね?
仕掛け番長
持ってました!(笑)メッチャかっこよかったですね。
寺島慎也
さん
ありがとうございます、恐縮です(笑)
仕掛け番長
今までで、デザインで一番苦労されたのは何ですか?
寺島慎也
さん
正直、未だに毎回苦労していますが、楽しんでますよ。
仕掛け番長
BB戦士って、本当に1つ1つのキャラクターが細部まで作り込まれていますもんね!小学生のころ、よくキャラクター同士を戦わせて、自分でストーリー作って、遊んでいました!
栗原昌宏
さん
『ザ・ラストワールド』は、そういうことができる世界として、生まれた背景もあります。
寺島慎也
さん
誰もが、ザ・ゴールドに呼ばれているっていう設定なので(笑)
仕掛け番長
ありがとうございます。最後になるのですが、今回サンライズ矢立文庫大賞ということで、1.5次創作の募集を行っておりますが、どんな作品が来たら嬉しいかをお聞きしてもよろしいでしょうか?
寺島慎也
さん
どんなものが来るか予想がつかないことが楽しみでもありますね。
栗原昌宏
さん
SDガンダムは当時からボンボンでデザインの公募をしたりしていました。最近でも、バンダイのワンダースクールウェブサイトで募集した中から、優勝したものをカードダスにしたりしているので楽しみですね。忍風伝のように、独自のSDワールドを表現してもらっても面白いと思いますね。
寺島慎也
さん
新キャラクターに関しては、僕らデザイナーはリアル頭身に変形できるものを、ある程度物理的に変形できるギミックを搭載してデザインするというのがありました。でも『ザ・ラストワールド』では、それを無理にやらなくてもいいんですよ。戦ってGソウルを貯めたら、それで機兵を作ったり、なんてことができるので。なので、Gソウルのおもしろい使い方を考えてみても良いんじゃないでしょうか?
仕掛け番長
ありがとうございます。では、最後に読者の方にメッセージをお願いします。
寺島慎也
さん
こういう時はこう言うと決めております!どう楽しんでもいいのです、SDガンダムは自由ですから(笑)
栗原昌宏
さん
僕自身、SDガンダムの企画に10周年の頃から関わるようになって、最初は右も左もわからない状態だったんですが、いつのまにかもう30年が過ぎていて、きっとすぐにSDガンダム40周年も来るので、皆様には引き続き、また末長く応援していただければ嬉しいです。
関連情報
SDガンダム ザ・ラストワールド