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  • INTERVIEW

大ヒット作・コードギアスシリーズの裏側!

2019.01.11

本日は、今年2019年2月に、まさかの続編「コードギアス 復活のルルーシュ」が劇場公開となり話題沸騰中のコードギアスシリーズ。矢立文庫(サンライズ)にて「コードギアス断章 モザイクの欠片」を執筆されている、ライトノベル作家の高橋びすいさん(@naojanne02)、そしてコードギアスといえばこの方!現在「コミックNewtype」(KADOKAWA)で連載されている「コードギアス 反逆のルルーシュ Re;」のシナリオも手がける、サンライズの谷口廣次朗さんにお話をお伺いしました。

取材=仕掛け番長(@maron_rikiya

コードギアスの世界を広げたい!

(左)高橋びすいさん  (中央)谷口廣次朗さん

仕掛け番長

まず「コードギアス断章 モザイクの欠片」はどのように作られているのか気になります。
モザイクの欠片は本編では語られることの無かったお話を切り取るというよりもスポットの当て方を変えたような今まであまり無かった関連作の作り方をされていると思います。このモザイクの欠片の物語の生みだされる過程を教えて下さい。

谷口廣次朗さん

元々は高橋さんに矢立文庫で連載を終えた小説「さよならピーターパン」をお願いしておりました。
その執筆作業が終わるか終わらないかのタイミングで、私の方から高橋さんに企画を持ち掛けたのが始まりですね。
コードギアスは完全新作映画「復活のルルーシュ」に向けて、TVシリーズ「反逆のルルーシュ」を劇場3本にまとめることが決まったとき、いくつかコンテンツを創りたいと考えました。

谷口廣次朗さん

「亡国のアキト」の時は、コードギアスの世界を横に広げることをコンセプトに「双貌のオズ」を企画し、バンダイ、KADOKAWA、ホビージャパンと展開したんです。
それならば、今回の劇場三部作を中心に据えた時、まわりで展開するコンテンツはどのようなものが良いかを考えました。

谷口廣次朗さん

そもそも劇場三部作は、復活のルルーシュをリリースするにあたって、12年前に反逆のルルーシュを見てなかった、見れなかった、知らなかった層にどうアプローチするかを考えた上で作られています。
と、いうのも新作の映画を見るのに、TVシリーズ50本、スピンオフアニメを5本、他にも色々見なきゃ楽しめない、というのは今の忙しいユーザーさんたちには不親切だからです。
谷口廣次朗さん

そこで、芯となる見やすい映画3本があります、と。でも、これまでコードギアスを応援してくれた方々には物足りないのではないか。その考えで、コンテンツを新しく4つ創ることにしました。
「コードギアス 反逆のルルーシュ外伝 白の騎士 紅の夜叉」「コードギアス 反逆のルルーシュ Re;」、「家庭教師のルルーシュさん」そして、最後に、本作「コードギアス断章 モザイクの欠片」です。

谷口廣次朗さん

ルルーシュという極めて強いキャラクターが物語の中心となる本編とは別の視点で、彼が主人公ではないコードギアス世界では、どんな物語が展開されるのか、それを創り出したいと考えたのです。
そこで、別の視点の物語を作るのであれば、視点は多い方が世界が広がるだろう、ということで短編のオムニバス形式を採りました。

谷口廣次朗さん

また、矢立文庫ならば、多少グロテスクであったり、後味の悪いストーリーであっても掲載できるという算段がありました。
おかげで他のコンテンツとは違った特徴が出せましたね(笑)

高橋びすいさん

今回のテーマは短編との相性も良かったと思います。長編ですと、読者の方は長い時間をかけて読むわけですから、ハッピーエンドのほうが満足感を得やすいので、後味の悪い終わり方をするのは難しい。もちろん、長編でもバッドエンドの名作はたくさんあるので、あくまで一般的な話ではありますが。

谷口廣次朗さん

C.C.がルルーシュに言い放ったように、ギアスは人を孤独にする。それを受けて私としては「ギアスに関わった人は幸せにはなれない」と思っていて。
今回の断章ではそれをテーマにしています。

谷口廣次朗さん

断章自体、実は、かなり昔から構想があったんです。
2010年頃でしょうか。「亡国のアキト」の制作が決まり、当時上司だった河口プロデューサーから、企画のタネを考えて欲しいと宿題をもらったんです。
「ルルーシュとは違う主人公」、「舞台はE.U.」、「KMF戦有り」というお題で。

谷口廣次朗さん

そこで6つほど企画プロットを提出し、その内の一つが「亡国のアキト」のタネとなったのですが、それ以外のネタを捨てるのは勿体なかったんですね。いつか、世の中に出したいと考えていて、その時のネタの1つが「消えた王女」で、今回第1編として出しました(笑)

仕掛け番長

もしかしたら、「亡国のアキト」じゃなくて、「消えた王女」が映画になった可能性もあるわけですか?

谷口廣次朗さん

どうでしょうか。仮に赤根監督が、この内容で映画化として広げようとなれば可能性があったのかもしれませんね。

仕掛け番長

今回の矢立文庫で連載されている内容も「反逆のルルーシュ」をメインとしている内容よりも「亡国のアキト」の内容の方が、ストーリーとして近い感覚がありますね。

谷口廣次朗さん

先ほどお話ししたお題ありきの成り立ちなので、感覚的に近く感じられるのかもしれませんね。
ですが、第1編「消えた王女」以外の5編は作り起こしたので、どれもこれもシンドい内容になっています。

高橋びすいさん

そうですね、残酷な話ばかりですね。

谷口廣次朗さん

谷口悟朗監督の作品性でもあると思うのですが、コードギアスの世界は残酷なんですね。だからこそ、主人公のルルーシュは妹ナナリーのためにあがくのですが、中々上手くいかない。でも、そのあがきながら頑張る姿勢がルルーシュというキャラクターを非常に魅力的に見せてくれます。

谷口廣次朗さん

断章でも、同じように残酷な世界で生きていく人々を描きたかったんです。だからこそ、読む方にとっては厳しい内容になってしまっているとは思うのですが。

仕掛け番長

それでこそ、コードギアスということですね!

谷口廣次朗さん

断章を発表した後、オムニバス面白そう、という視聴者、読者の声をいただいていたのですが、連載をスタートしてみると、登場キャラクターが酷い目にあうので賛否両論の意見をいただきましたね。

高橋びすいさん

原稿を書き上げたら、コメントをもらいつつ適宜修正していくのですが、そのときに「救いがあるから、もっとエグくして欲しい」というオーダーをもらうこともありまして……。粛々と救いを削ぎ落していくことも多かったです(笑)

仕掛け番長

救いは与えないって、ことなんですね(笑)

谷口廣次朗さん

中途半端な救いはいらないと考えているからですね。
他の作品には、皆が優しかったり、幸せになるような作品も多数あると思いますが、コードギアスの世界で、それをしてしまうと、結果的にキャラクターとして死んでしまうと考えています。ですので、嫌なことがあっても、自分が為すべきことのために命を使って物語を紡いでもらいました。

仕掛け番長

あれだけ優しい世界と言っていたナナリーですら、ああなるということからも、そこは伝わりますね。

谷口廣次朗さん

これは谷口監督の信念に近いと思うのですが、自分の我を通すなら、その分のマイナスや痛みを負うべきである、というものですね。
谷口監督の「無限のリヴァイアス」や「スクライド」を見ていただくとわかると思いますが、登場人物が「自分がこうしたい」、「こんな未来をつくりたい」と我を通すならば、その分のマイナスも受け入れて、覚悟をする必要に迫られます。

谷口廣次朗さん

ルルーシュは最たる例で、ナナリーが望んだ「優しい世界」を実現するために、命を賭してゼロ・レクイエムを実行したのも、まさに、その覚悟ですよね。

仕掛け番長

撃っていいのは撃たれる覚悟があるヤツだけ、というのは本当に体現していますよね。

仕掛け番長

「コードギアス断章 モザイクの欠片」第1編「消えた王女」はブラックリベリオンの失敗から数ヵ月後のお話で、時系列的には「亡国のアキト」と同じころと考えてよろしいのでしょうか?

谷口廣次朗さん

そうですね、近しい時期ですね!

仕掛け番長

この「消えた王女」の読みどころをネタバレをしない程度に教えて下さい!

谷口廣次朗さん

ネタバレしないで伝えるのは難しいですね(笑)高橋さん、何かありますか?

高橋びすいさん

断章の各話はすべて、コードギアスの本編だったらモブキャラになるような人たちを主人公にしたお話になっています。たとえば、アクションシーンの合間に撃たれて死んでしまうようなモブキャラってたくさんいますよね? 彼らにも人生はあるわけで、そこには必ずドラマがあるはずだ……といった想像力が作品の原動力になっています。また、所詮はモブキャラなので、ギアスのような圧倒的な力を得たり、それに関わったりすると、破滅的な運命に巻き込まれてしまう。

高橋びすいさん

第1編「消えた王女」の主人公であるエリーサも、王女ではあるものの、あくまでモブ。本作ではそんな彼女がギアスという分不相応な力を手に入れてしまった結果、数奇な運命をたどるわけです。けれど、彼女には彼女なりの意志と覚悟があり、自らの運命に一矢報いようとする。そんな彼女の生き様を見ていただけると嬉しいです。

仕掛け番長

今回の主人公って、モブ中のモブじゃないですか?検索しても出てこない人物だらけですし(笑) 本編から膨らませた想像力を掻き立てられるストーリーですが、そちらを狙ったんですか?

谷口廣次朗さん

それは狙いました。
モブ中のモブと言いますか、普通の人なんですよね。その普通の人がギアスという超常の力に関わったことで、物語が展開していく。ただ、彼らには普通の人なりに普通の願いがあって、それを完遂するために動いていくんです。そのことに後悔している主人公はいないんじゃないですかね?

高橋びすいさん

主人公たちに後悔だけはさせないようにストーリーを作りました。全6編、是非読んで頂ければと考えています。

仕掛け番長

ちょうどネタバレしない程度に、ありがとうございます(笑)

仕掛け番長

「コードギアス断章 モザイクの欠片」その他の編もそれぞれコードギアスの物語の歴史を埋めていくようなお話になっており、ファンにはたまらないものになっております。そんな中でお二人がそれぞれお気に入りの編とその読みどころポイントを教えて下さい。

谷口廣次朗さん

どれか選ぶとすると、私は第2編の「四日間」でしょうか。個人的に、よくある復讐劇に納得がいかないんです。奥さんを殺された男が復讐を決意して旅に出て、その途中、少女と出会い、旅の最後、仇敵を追い詰めたところで、何も知らない少女に「復讐したら、あなたも同じになってしまう」と言われ、男は復讐をやめるっていうのがありますよね。 私はそこで不思議に思うんです。そこで改心するぐらいなら最初から復讐なんかしないんじゃないかな、って。

谷口廣次朗さん

ですので、「四日間」に関しては、復讐を完遂してもらうことにしました。それは悲しくて、やるせなくて後味の悪い物語ではあるのですが、復讐者にとっては、胸に深く突き刺さった後悔の棘が抜けてスッキリさせています。覚悟をもって挑んだからこそ、想いを成就することが出来た、ということですね。それを表現できた「四日間」はお気に入りのエピソードですね。

高橋びすいさん

私は二つ選ばせていただきますね。一つ目は第4編の「夢で逢えたなら」です。個人的に、この作品が、今回の断章の中で一番『コードギアス 反逆のルルーシュ』のモブっぽい話だと思っていまして。主人公の悠一みたいな境遇の人って、本編のストーリーの陰にたくさんいたんだろうな、と。もちろん、ギアスが関わっているので、悠一は多少特殊な環境にいるわけですが、それでも空気感は多くのモブを代表していると思うんです。

高橋びすいさん

彼って、漫画だったら事件の一コマ目で死んでしまうようなタイプのキャラですから。
そんな悠一が、彼なりに前向きに考えてどういう決断をしたのか、を読んで頂ければと思います。甘くない最後を迎えるわけですが……。

高橋びすいさん

二つ目は、第5編の「ひとごろし と ひとごろし」です。本作の目玉は、能力バトル的なアクションです。私は、能力バトルものの本を何冊も書いているので、自分の得意分野ということで、全力で想いを詰め込みました。コードギアスって、能力バトル的な要素も強いと思うんですよ。
谷口廣次朗さん

まぁ、マシンを通してですけど(笑)

高橋びすいさん

そうですね。「ひとごろし と ひとごろし」では、マシン抜きでのギアス戦を描けたので、新鮮であると同時に、ギアスというアイディアの奥深さも感じることができました。

高橋びすいさん

また、「ひとごろし と ひとごろし」のテーマとして「正義」があげられます。この正義というのは、私個人の意見ですが、コードギアス本編でも大きなテーマとして描かれていると思うんですね。それぞれのキャラクターが、皆、自分の正義のために戦っている……。そしてその正義は、彼らの暴力を肯定していく……。

高橋びすいさん

「ひとごろし と ひとごろし」に出てくるキャラクターも、自分の正義を貫くために、自らの暴力を肯定し、他者を傷つけていきます。その正義は小さく矮小なものではあるのですが、それでもそこには一つの生き様があります。そこは、是非、読んでもらいたいです。

仕掛け番長

コードギアスは全編を通して、強い想いが正義となり最終的に暴力へ繋がる内容となっていますが、全体的なテーマと言えるんでしょうか?となると、最終話も、そういった内容になっているのでしょうか?

谷口廣次朗さん

いえ、最終話は、ちょっと違うかもですね(笑)

高橋びすいさん

そうですね、ちょっと違いますね(笑)

谷口廣次朗さん

ギアスという特殊能力は、他の作品の特殊能力、例えば、念動力でものを動かすとか、爆発を起こすとか、そういった大きな影響を及ぼす強力な能力ではありません。人の脳に作用し、影響を与えることしか出来ない、見方によっては脆弱な能力です。このコードギアスの世界は非常に残酷で、特殊な能力であるギアスをもってしても抗えない強大な暴力を行使されます。

谷口廣次朗さん

ナイトメアフレームやフレイヤなどがそうですね。ただ最後の6編は、不幸になるはずのギアスを使って、そういった大きな暴力から逃れる救いの内容となっています。他の5編も、ある側面では救いに向けた内容になっているのですが、読む方によっては救いではなく、悲劇に見えるかもしれません。

高橋びすいさん

救いを定義することの難しさも味わっていただけると嬉しいですね。たとえば、「痛みを取り除くことが救いだ」と考えた場合、極端な話、「死は救いである」と言うことだってできてしまうんですから。

仕掛け番長

コードギアスの出た頃って、勧善懲悪でこんなにも悩ませる作品って、他に無かったんじゃないかと思いますし、そういったアニメ作品は、はじめてだったんじゃないですか?

谷口廣次朗さん

コードギアスは、個の話と言える点で他の作品と異なるのかもしれませんね。
目も足も不自由な妹が安心して生きられる平和な世界を作るためであれば、人の意思を歪め、排除しても良いとルルーシュは考えます。
目的のためならば、他人をないがしろにしても良い、というのは、常識には当てはまりません。ただ、ルルーシュを含め、コードギアスのキャラクターたちは、そうせざるを得ない状況に置かれているためでもあります。

仕掛け番長

そうなんですよね。スザクにおいても、出てきた当初みんなの幸せを願っていたように見えましたが、あそこまでルルーシュへの個人的な想いにこだわっていき、ああなってしまうとか、人間の本質に言及しているように思うんですよね。しっかり、個として捉えて描かれたのが、コードギアスなんだろうと今は感じています。

谷口廣次朗さん

そこが、コードギアスという作品のおもろしい部分だと思います。キャラクターたちが崇高な部分とエゴの塊の部分を合わせ持っていて、それぞれのキャラクター性を深め、物語に厚みがありますよね。お話しに出たスザクもそうで、守るべき主君であり、心を通わせたユーフェミアが掲げた大目的に向けて動いたことで、気付いていないとはいえ、ルルーシュたちを追い詰めましたよね。ユーフェミアもスザクも、ルルーシュたちや日本人のためを思っての行動なのに。

谷口廣次朗さん

仮にスザクとユーフェミアの掲げた行政特区日本が成功していれば、ルルーシュとナナリーは、もっと追い詰められることになっていたでしょう。ルルーシュのギアスの暴走があり、行政特区日本が失敗したから、スザクは悪者に見えていないと思うんですよね。

仕掛け番長

モザイクの欠片は現在の第6編「彼に見られたパンツを忘れさせるためにギアスをかけたいけど、恥ずかしくて目を合わせられるわけがない」というタイトルだけで気になる編がまさかのラストエピソードになっているのですが今後今回のモザイクの欠片のように小説で歴史のピースを埋めていくような作品は続いて行く可能性はあるのでしょうか? ※最終話12/19に更新しました

谷口廣次朗さん

断章としては続けていきたいですね。今度はどこを埋めるか、ということですが、私たちは、埋めているというより、広げているイメージに近いんですね。

谷口廣次朗さん

例えば、第3編「ゼロの男」は、記憶喪失モノがやりたかったんです。「亡国のアキト」のネタ出しの時も、ゼロがブラック・リベリオンで行方不明になったことを利用して、新しい主人公が記号としてのゼロを演じる、というネタを考えたのですが、「ゼロの男」はそれを転じたものです。

谷口廣次朗さん

この「ゼロの男」を作っていくにあたって、まずは設定を考えました。なぜ記憶喪失の主人公は自分をゼロだと思ったか。そこで、「反逆のルルーシュR2」冒頭の状況を利用させてもらいました。ブラック・リベリオン後、姿を消したC.C.をシャルル皇帝は欲している。そうすると、C.C.を引き寄せるための撒き餌を用意するだろう。本編では、記憶を改竄したルルーシュがそうであったように、ゼロの正体を知るC.C.が関心を持つよう、ゼロの記憶を持つ人間を用意した、ということにしたのです。

谷口廣次朗さん

なので、「ゼロの男」の主人公もその中の一人とし、そこから物語を組んでいきました。そういった経緯なので、時間軸がR2の直前となり、歴史を埋めているように見えるのではないでしょうか。

高橋びすいさん

そうなんです、なので、埋めるというよりは、語られていない世界観を広げていく、というイメージが近いと思います。

谷口廣次朗さん

「四日間」の内容も、どのタイミングでも本当は良かったんです。山の事故に遭えばいいだけなので。ただバランスや世界の広がりを考えて、ユーロ・ブリタニアの歩兵部隊に設定したりしました。

仕掛け番長

これ、本当に、おもしろいですね!創る側と、見ている側の違いですよね。見ている側はある世界が語られていっている印象になっていますね。それこそ、「亡国のアキト」のときは、まさに衝撃的でしたもんね。

谷口廣次朗さん

そう言っていただけると、私たちの行っていることが成功しているのかもしれません。コードギアスは設定など後発の作品から逆輸入して世界を広げていっています。都度創るものを、大きな流れに加えていっているような感覚ですね。

谷口廣次朗さん

例えば、「ゼロの男」にブライトンというナイトメアが出てくるんですね。このブライトン、何年か前にパチスロ用の機体として作ったものなんです。中東で目覚めた主人公が日本を目指すにあたって、空が飛べるナイトメアを出す必要がある。そうであるならばブライトンを使用しようと思い、開発秘話も含めて物語に加えたんです。

仕掛け番長

ではあのナイトメアも、パチスロには出てるんですね!(笑)

谷口廣次朗さん

はい。出ていますよ。他にも鳴月といったナイトメアフレームを作成し、後の別の物語に出演しています。
こういった逆輸入を始めたのは、「双貌のオズ」の存在が大きいですね。例えば、ルルーシュが皇帝となったR2の22話で、作画の都合上で出さなかったナイトオブラウンズの機体がいくつかありました。

谷口廣次朗さん

スザクのランスロット・アルビオン初登場の回で、如何にアルビオンが強いかを表現することもあって、最強のはずのラウンズたちが瞬く間にやられます。そのため、制作スケジュールやコスト、出演尺などを考慮して、デザイン画を起こさなかったんですね。

谷口廣次朗さん

でも、視聴者の方の視点では「モニカやドロテアは何に乗ってたの?」と、当然の疑問を抱かれるわけです。そこで、私が担当していた「双貌のオズ」で補完することにしました。例えば、モニカのフローレンスですね。ブリタニアが回収したアレクサンダをブリタニアの技術で改良した機体なのですが、名称自体はR2の制作時からあったんです。大河内さんが、書かれた脚本の1稿目に、モニカが「フローレンスで出る」ってシーンがあったのですが、尺やコストの都合上、こちらも削ることになりました。

谷口廣次朗さん

結果的に数年経って、こちらの名称をいただいて使用させてもらったんですね。これは、私がずっとコードギアスに携わっているからこそ実現できていることだと思います。その後は、劇場3部作にランスロット・グレイルが出演したり、相互に追加していく形でコードギアス世界が広がっている感じですね。間もなく公開される「復活のルルーシュ」にも、「亡国のアキト」や「双貌のオズ」のナイトメアが出演しています。

 

 

仕掛け番長

今回のサンライズ矢立文庫×マンガハックで開催される、サンライズ矢立文庫大賞では、「コードギアス断章 モザイクの欠片」の1.5次創作を募集するという画期的なコンテストとなっていますが、どんな作品が投稿されたら嬉しいかを教えて下さい。はじめてマンガ・イラストになるキャラが多数かと思うのですが(笑)

谷口廣次朗さん

そもそも描いてないですからね(笑)高橋さんって、ストーリーを考える時にキャラクターのイメージを想像してますか?

高橋びすいさん

はい、見た目も想像して考えてますね!ただ、それはあくまで私の解釈したキャラクターの外見なので、皆さんが断章を読みながら想像したキャラクターがどんな姿をしているのか興味があります。ぜひ作品として見せていただきたいです。また、マンガ・イラスト共に、作者なりのテーマ性があるものが嬉しいですね。お行儀が良い作品とかではなく、自分が描きたいものを、わき目も振らず全力でぶつけたような作品を見てみたいですね!

谷口廣次朗さん

断章6編すべてを読み込んで頂いて、それぞれの登場人物が何を為そうとしたか、どんな願いや想いを持っていたかを、投稿していただける方なりに解釈してもらい、作品に反映していただけると嬉しいですね。どのキャラクターもみんな可愛いは可愛いんですよ、自分たちが生んだキャラクターなので。

高橋びすいさん

そうですね! やっぱり思い入れがあります。思い入れが強すぎたのか、「消えた王女」を書いたときは、書き終わってから1週間寝込むレベルでしたからね。書きあげたあとに、そのまま、ベチャーっと寝込んでしまいました。

高橋びすいさん

深く作品に入り込んだ結果、主人公のエリーサに感情移入しすぎたのが原因かな、と思っています。結構エグい話で、最後に決死の一撃を出す内容なので、書くのも辛かったのですが「この作品は私が書かなきゃ誰も書けないんだ!」という気概でやりましたね。そういう意味だと、投稿者の方にしか描けないまったく新しいストーリーでも、全然良いと思います!

仕掛け番長

おぉー、結末を変えてしまうのもアリなんですね!「消えた王女」は、一番インパクトありましたね。

谷口廣次朗さん

そうですね。「消えた王女」は断章のトップバッターなので、読んでいただいた方に、「こんなコードギアスもあるのか」と思っていただけるように。意図的にインパクトを持つように創った作品ですね。

高橋びすいさん

1話目なので、センセーショナルな作品になるように心がけたのもありますね。

谷口廣次朗さん

はい。インパクトを強めるために出来るだけ分かりやすいストーリー展開にしたのですが、もともと構想していたものですと、普通のラブロマンスとなり、ハッピーエンドにしかなりません。

谷口廣次朗さん

そこで、「消えた王女」に関しては、一味違う作品になるように、みんなが嫌う極端な性癖をもった皇子を相手役に持ってきました。

高橋びすいさん

(笑)

仕掛け番長

(笑) コードギアスって、ラブロマンスになりそうで、実は全くならないという思わせぶりな展開が、とても多いですよね?あえて「そうは、させないぞ!」といったストーリーとか(笑)

谷口廣次朗さん

今回は、そういった内容が、多かったですね。6編中4編がラブロマンス系でした。

高橋びすいさん

そうでしたねー!

谷口廣次朗さん

2編目、5編目は違いますけど、それ以外は男女の恋愛をテーマとして描こうとして、わざと描かなかった感じですね。

高橋びすいさん

第3編の「ゼロの男」だけ、ロミオとジュリエットでしたけどね(笑)

仕掛け番長

人の想いをテーマにすると、やっぱり、恋愛とかに行きやすいんですかね?

高橋びすいさん

強い想いを描こうとすると、恋愛が題材になりやすいのはあるでしょうね。でも、あえて、兄弟愛とかにする感じとかがコードギアスっぽいと思います(笑)

谷口廣次朗さん

人の想いをテーマにした場合、ギアスという力をお話しを転換させる謎やギミックに用い易いという利点もありますね。例えば第4編「夢で逢えたなら」もそうです。読んでいただくと分かる内容かと思いますが、旦那さんに夜の営みを求められて、拒む奥さんがいます。

谷口廣次朗さん

浮気なのでは、との疑いがある展開で、それが「やはり浮気でした」なんて展開ですと物語になりません。拒む理由にはギアスが大きく関係していて、といった具合です。どういったギアスなのか、ギアスが登場人物にどんな影響を及ぼしているのか、その辺りもご覧いただければ幸いです。

仕掛け番長

最後に、記事を読んでいる読者の皆様にそれぞれメッセージをお願いいたします。
高橋びすいさん

やっぱり、私自身、コードギアスの大ファンなので、同じようにコードギアスが好きな方が断章を通して自分なりの楽しみ方を見つけてくださったら嬉しいですね!
ささやかながら、そういった楽しみ方を、ご提供できれば幸いです!

谷口廣次朗さん

断章に関しては、コードギアスの本編が好きな方からは、好みが分かれる作品だと思います。
ただ、こういった作品も内包出来るほどコードギアスの世界は大きくなっているのだと、寛大なお気持ちで一度はこの「コードギアス断章」を読んでいただければ幸いです。

仕掛け番長

お忙しいところお時間頂きまして、本日はありがとうございました!

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